不動産売買価格の動き

不動産売買価格の動き

これまで日本の公示地価はインバウンド需要や金融政策などに支えられてこれまで上昇が続いてきました。しかし2021(令和3)年にさまざまな出来事が起こっていることで、今後の見通しに不安を抱いている方も多いでしょう。そこで、今後の不動産価格の見通しについて解説していきます。

超低金利による不動産の購買意欲の上昇

2021(令和3)年時点での日本は、依然としての超低金利となっており不動産価格の上昇傾向に貢献しています。低金利が続けば住宅ローンの総返済額も下がるため、投資家のみならず一般消費者の購買意欲も上昇するでしょう。

ここで大切なポイントは「いつまで超低金利が続くか」という点です。購入後に金利が高くなってしまうと不動産価格が下落傾向になる上、変動金利でローンを組んでいた場合には月々の返済額も高くなってしまいます。将来的な金利がどうなるか明確なことは誰にも分かりませんが、一般的に不景気時ほど金利が低く誘導される点は理解しておきましょう。なぜなら日銀は不景気時に金利を低く誘導して、不動産の購買意欲を刺激し消費の活性化を図るからです。

日本銀行が2021(令和3)年7月19日に発表した「経済・物価情勢の展望」によると、「日本の景気は引き続き厳しい状況にあるが、基調としては持ち直している」となっています。とはいえ、ワクチン接種の進展や、新たな変異株に対する世界の対応を考えると、引き続き不確実性が高く、現状の水準を維持する意識が高いと思われることから、今後も超低金利の状態はしばらく続き、不動産の購買意欲を刺激する政策が続く可能性は高いと言えるでしょう。


新型コロナウイルスの影響による景気停滞の長期化

金利の低下によって不動産の購買意欲はたしかに刺激されます。とはいえ忘れてはいけないのは、景気が悪くなりすぎると消費者の手元に不動産を購入するお金そのものがなくなることです。特に2020(令和2)年初頭から感染が広がった新型コロナウイルスは、実体経済に大きな悪影響を与えています。2020(令和2)年8月17日には、同年4~6月期のGDPは年率換算でマイナス27.8%減となり、戦後最大しかも3期連続マイナスという衝撃的な数字が発表され、さらに2021(令和3)年1~3月の実質GDPは前期比マイナス1%(年率換算マイナス3.9%)と3四半期ぶりのマイナス成長となった点も見逃せません。

特に影響が大きくなることが予想されるのが、観光や飲食といったサービス業と百貨店やアパレルショップなどの小売業です。これらの業種では新型コロナウイルスによる経済活動の自粛が繰り返されることで、今後さらに大きな打撃を受けることが予想されます。

実体経済が悪くなるとオフィスや飲食店などの不動産需要が減ってしまい、一般的に不動産価格は下落傾向になります。景気が悪くなることで高い買い物であるマイホーム購入も様子見をする人が多くなり、需要が減少して不動産価格が下落するという悪循環に陥る可能性は否定できません。ただ、国土交通省が発表している不動産価格指数(2021(令和3)年5月・第1四半期分)によると、実際には、マンションの価格指数は2020年からも上昇し続けており、マンションおよび建売住宅における需要の増加が見られます。

また働き方改革やテレワークの普及によって、従来のオフィスに通う働き方が変化する可能性もあります。事実、リモートワークの普及に伴い、都心のマンションよりも郊外の戸建ての需要が高まっている傾向は今後も続くと予想されます。

現在、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が慢性化していることにより、人々の考えは、「ゼロコロナ」から「ウィズコロナ」へとシフトしています。在宅ワークやテレワークの普及に伴い、働き方に対する意識もこの1年半で著しく変化しました。大手企業では、本社の機能を地方に分散するなどの動きも出始めています。そのような動向も踏まえ、ワクチン接種状況や政府対応などの最新情報を入手しながら、常に相場を注視していく姿勢が重要です。


少子高齢化による人口減少と、働き方改革による影響

日本国内の不動産需要を語る上で避けては通れないのが、少子高齢化による人口減少です。人口が減少すると必然的に不動産需要が弱まり、不動産価格が下落しやすくなってしまいます。総務省が公表した「人口推計(2021年8月1日現在)」によると、日本の総人口は前年(2019年)同月比51万人減の1億2530万人で9年連続の減少となっています。

特にインバウンド需要のない地方では、緊急事態宣言による自粛などの影響を受け、繁華街を中心に地価が下落傾向です。都市部についても、オリンピック閉会直後であることから、現状はおおむね横ばいで推移しています。外国人労働者の増加によって国内の労働力不足を補う施策も徐々に進められていますが、現状では人口減少をカバーするほどではありません。

ただしコロナ禍の影響によって、テレワークや働きながら休暇をとる「ワーケーション」などの新しい働き方が普及してきていることから、都市部とインバウンド需要のない地方では二極化の傾向が顕著となっています。不動産価格については、都道府県別の地価情報を見ると、大都市では大幅な下落が認められたものの、地方においては下落率もそこまで大きくなく、さらには地価が上昇した地域もみられます。